環境・CSR担当者訪問  

株式会社大和証券グループ本社

今回取材に伺ったのは、株式会社大和証券グループ本社。従業員数15,000人以上を抱え、総合的な投資・金融サービスを提供する、言わずと知れた金融大手だ。また、ワーク・ライフ・バランスの取組みにも積極的で、日経WOMAN誌2008年5月号の「女性が働きやすい会社Best100」において総合第7位、女性活用度第1位、2009年9月に掲載された日本経済新聞・日本経済産業新聞の「働きやすい会社2009」では第7位など働きやすい職場としても定評がある。業界でも異例という19時前退社を敢行し、有給取得も推進しているというが、大和証券グループがワーク・ライフ・バランスに取り組む理由は何なのか。金融業界の求められる社会的責任とは?CSR室の渡邊麻実さんに話を聞いてきた。

    

取材/清宮恵子
写真/川上ふみ子

株式会社大和証券グループ本社 だいわしょうけんぐるーぷほんしゃ  URL:http://www.daiwa-grp.jp/index.cfm
特色 次世代の日本と世界の人々が、環境と調和しつつ産業を発展させ豊かな生活を送るために、 金融の機能を通じて何ができるか、いかに行動すべきかを考え実践。
所在地 〒100-6752 東京都千代田区丸の内一丁目9番1号 グラントウキョウ ノースタワー
設立 1943年12月27日
業種 証券
資本金 1,783億円(2009年3月末現在)
代表者 鈴木 茂晴
従業員数 (連結)15,224人(2009年3月末現在)

19時前退社をスタート
トップ自らワークライフバランスを強化

―大和証券グループといえばワークライフバランスの取り組みに積極的ですね。
取組開始の背景を教えて下さい。

現在、大和証券グループでは執行役社長の鈴木茂晴がCWO(Chief Work-life-balance Officer)を務め、全社一丸となってワーク・ライフ・バランスに取り組んでいます。
「今まで証券会社は片翼飛行(男性だけ)で飛び続けてきた。でも両翼飛行になればもっと高く飛べる」と鈴木はよく言います。証券会社は"男性の職場"と捉えられる風潮が強かった中、当社グループは他社に先駆けて女性を積極的に活用してきた過去があります。しかし、結婚や出産を機に退職をしていく女性も少なからずいました。そうした人材を活用できないのは、会社にとっても本人にとってももったいないことですよね。証券業界というのは、専門的な知識や経験が必要な分野です。ならば培った経験を持つ女性社員をもっと存分に活かしていこう、ということで、まず女性活躍推進に着手しました。そして、女性が働きやすい環境がある程度整った2007年頃から、男性社員も含めた働きやすい環境作り、ワーク・ライフ・バランスへの取り組みに軸がシフトしてきたわけです。
ワーク・ライフ・バランスの取り組みの1つである19時前退社の励行は2007年6月から始まり、今ではほぼすべての部室店に浸透しつつあります。

―今までのところ、成果はいかがですか?

取り組みを開始した当初は、「本当に大丈夫か?」と不安の声を挙げる社員も多くいました。しかし、19時前退社を実施することで社員のモチベーションはより高く維持できるようになったし、会社にとってもプラスの面が大きかったと思います。社員は仕事とプライベートのプランを、より自分自身でコントロールできるようになりました。それぞれ家族と過ごしたり、資格の勉強をしたり、ジムに行ったり、有意義に過ごしているようです。

―成功の秘訣は?

色々な考えを持つ人がいるのは当たり前ですが、社員一人ひとりの意識を変えていくこと、会社の雰囲気を変えていくことが何よりも重要だったと思います。そういう意味では、トップ自らが推進役になっていたことは大きかったですね。鈴木は、研修や店長会議、各支店を回る際などあらゆる場面で、ワーク・ライフ・バランスの重要性を説いていったんです。その成果もあって、現在では会社の隅々までワーク・ライフ・バランスの考え方が浸透しつつあると思います。また、制度を作るだけでなく、制度が活かされるように働きかけることが必要です。人事部のワーク・ライフ・バランス推進課が中心になって、どこの職場内でもそういった雰囲気作りができるように綿密にコミュニケーションをとり続けたのもポイントではなかったかと思います。

社会的課題の解決に寄与する金融商品の販売、
お金のトレーサビリティに注目する時代へ

―CSRの方向性として、「金融機能を活用して持続可能な社会に貢献する」ことを掲げていますが、
具体的にはどのような取り組みをされていますか?。

CSR活動にはさまざまな考え方があるかと思いますが、当社はできるだけ自社の強みを活かして社会に貢献したいと考えています。それが、"金融機能を活用して"ということになるのですが、具体的には例えば2008年より販売しているワクチン債などが挙げられるかと思います。


―ワクチン債とは、どのような商品ですか?

ワクチン債とは、「IFFIm(International Finance Facility for Immunisation Company)」を発行体とする外国通貨建て債券です。債券を発行することで、開発途上国の子どもたちが、より早期に予防接種を受けられるという仕組みになっています。現在、アジアやアフリカをはじめとする開発途上国では、毎年230万人もの子どもたちが簡単に予防できるはずの感染症のために大切な命を失っています。「IFFIm」は、そういった子どもたちに予防接種を無償提供する世界レベルの官民パートナーシップ「GAVIアライアンス(Global Alliance for Vaccines and Immunisataion)」の国際金融調達機関であり、その資金は各国政府(英国、フランス、イタリアなど7カ国)からの寄付金で賄われることになっています。ところが、各国政府は約20年間にわたって寄付金を計画していますから、"今"ワクチンを必要としている子どもたちにとっては間に合わないという現状もあるのです。その「期間ギャップ」を解決しようというのがワクチン債で、将来得られる寄付国からのキャッシュ・フローを債券発行により前倒しで調達し、"今"この瞬間に失われようとしている命を救おう、というのが目的になっています。

―お客様の反応はいかがでしたか?

結果論ですが、第一回の販売後の分析によると、特に女性や医療関係者の方々に比較的強い関心を持って頂けたようです。発行額は2008年が約220億円、2009年が約429億円となっており、今年になって他社もワクチン債を発行しましたから、社会の関心は高いと言ってよいかと思います。ワクチン債発行により、お客様が債券に対して投資リターン+αを求めていることも分かってきました。お金のトレーサビリティとでも言うのでしょうか。自分たちのお金がどこから来て、投資したお金はどのように使われていくのか。リターンだけではなく、そういうところにも注目されているお客様が大変多いということが、だんだんと分かってきたのです。

―他には?

11月に発行される予定のマイクロファイナス・ボンドがあります。
これは、国際金融公社を発行体とする外国通貨建て債券です。この債券によって調達された資金は、国際金融公社が、主にマイクロファイナンス事業をサポートするための投融資に使用する予定です。 マイクロファイナンスとは、貧困状態などで担保や仕事がなく、商業銀行からの融資などを受けられない人々を対象とする小額の金融サービスです。開発途上国の貧困層の経済的自立に寄与することが期待されています。
ですから、投資家は、マイクロファイナス・ボンドへの投資を通じて貧困削減への取組みに間接的に貢献することができるわけです。

―投資をしながら社会貢献活動に参加できる、という訳ですね

従来の社会貢献活動の関わり方では、まずは寄付という考え方が一般的だったと思うんです。ワクチン債は、そこに経済・金融の仕組みを活かすというエッセンスをプラスするんですね。そうすることによって、お金を必要とするところにお金が循環するようになる。寄付をし続けるというのは難しい側面もあると思いますが、投資という形をとることによって、活動の持続可能性はより高まるのではと考えています。それから、ワクチン債やマイクロファイナス・ボンドのような商品を販売することによって、投資家に対してこういう現実があると広く伝える役割も果たせると思っています。

投資ニーズと資金調達ニーズ
そこを調整するのが、私たちの仕事です

―金融機関に求められるCSRとは、何だと思われますか?

金融機関は直接的に目で見える環境商品や技術を提供できるわけではありませんが、経済の方向性を方向づけるという点において非常に大きな役割を担っていると思います。たとえば投資する際の意思決定プロセスの中に、ESG(環境、社会、ガバナンス)を取り入れていこう、とかですね。紙を減らすとかCO2を減らすとかそういうことももちろん重要ですが、私たちが求められる一番の役割というのは、やはり方向づけの部分ではないかと思っています。

―現在の仕事に就き、自身の気づきや変化はありましたか?

金融の仕事をやっていますと、投資には損得がありますし、時間との勝負という側面もありますから、近視眼的になってしまうことがあると思うんです。環境問題やCSRに携わるようになり、そこを一歩引いて、お金の流れについて考えたり、俯瞰してものごとを見たりする力がついたのではないかと思います。資金調達が必要な企業や国際機関などがあり、一方で資金を運用したいという個人・機関投資家などがいる。そこの流れを円滑にするのが私たちの仕事だと思うんです。CSR室へ来て、そういう私たちの会社が本来持っているインフラとしての社会的責任にあらためて気付かされることが多いような気がします。

―今後の抱負を教えて下さい

"持続可能な社会を実現する"、その目的を見失わずにこれからも活動に取り組んでいきたいと思います。もっと業界についての知識を深め、色々な方とコミュニケーションをとりながら頑張りたいと思います。

―ありがとうございました。

編集後記:

先日は上智大学で学生向けにCSRの講演もおこなってきたという渡邊さん。自らCSR室を希望したとあって、イキイキとインタビューにお答えいただきました。そこには確かに女性が活躍できる雰囲気というものがあり、ワークライフバランスの取り組みは着実に進んでいることが取材からも窺えました。両翼飛行となった大和証券グループが今後どのようなCSR活動を展開していくのか、ますます期待したいと思います。

渡邊 麻実
渡邊 麻実:経済の方向づけ それが金融機関の役割です

渡邊 麻実(わたなべ あさみ)

株式会社大和証券グループ本社 CSR室

大学卒業後、06年大和証券SMBCに入社。債券やデリバティブ等を扱う金融市場営業第2部に配属され、法人向け営業に携わる。08年10月から現職。CSR報告書の作成やSRI調査機関からの調査票回答などCSR業務全般を担当している。

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