環境・CSR担当者訪問  

森ビル株式会社

六本木ヒルズや表参道ヒルズなど、次々と話題の施設を誕生させてきた森ビル株式会社。街の流れを変え、人々のライフスタイルにまで影響を及ぼすなど、その存在感は極めて大きいと言ってよいだろう。そんな森ビルが目指す、理想の都市とは「Vertical Garden City」。空間を縦に利用することで、都市と自然が共存するまちづくりが可能だという。一体どのような内容なのか。森ビル株式会社 環境推進室 上席副参事の武田正浩さんに話を伺った。

    

取材/清宮恵子
写真/川上ふみ子

森ビル株式会社 もりびるかぶしきかいしゃ  URL:http://www.mori.co.jp/
特色 森ビルは、都市づくりにおける3つのミッションとして、「安全・安心」「環境と緑」「文化・芸術」を掲げています。
「安全・安心」 目指すのは災害時に「逃げ出す街」から「逃げ込める街」です。
「環境と緑」 都市と自然は一緒に生きられると思います。
「文化・芸術」 新しい創造力と可能性を育む都市へ。
所在地 東京都港区六本木6丁目10番1号 六本木ヒルズ森タワー
設立 1959年6月2日
業種 不動産業
資本金 650億円
売上高 1,787億円(2009年3月期 連結)
代表者 森 稔
従業員数 1,342名(2009年4月)

都市と自然が共生する
Vertical Garden City構想

―森ビルの都市づくりは緑化にも積極的ですが、理想とする「Vertical Garden City」とはどのような構想なのでしょうか?

Vertical Garden Cityとは、立体的な緑園都市。建物はなるべく高層化してコンパクトに、空地は人と緑に開放するという考え方です。細分化された土地を集約することで建物の密集は解消され、代わりに緑のある広いオープンスペースや季節を感じられる自然のある風景が生まれるのです。

都市と自然が共生する快適な都市環境は、ヒートアイランド現象を緩和するだけでなく、市民参加型の「ガーデニングクラブ」などを通じて、緑を介したコミュニケーションの形成にもつながっています。さらに最近では、地下利用にも積極的。都心は坂が多いことでも有名ですが、この斜面を、太陽をあまり必要としない劇場やホールに、空間として利用しています。これもVertical(縦の)という考え方の延長ですね。

―そのような考え方は、いつ頃からあったのですか?

アークヒルズの開発が大きな契機になりました。従来のまちづくりというのは、単一用途、つまり中心部にはオフィスを建て住宅は郊外に、という考え方でした。国の政策もそうでしたし、森ビルもそのようにやってきた。虎ノ門界隈で小さなビルを建て始め、ビルの建て替えや小規模開発のようなことをやってきていたのです。次第に、比較的大きな、ナンバービルと言われる建物も開発するようになる訳ですが、当時からその界隈に住んでいた社長はあることに疑問を持っていました。

それは、週末になると人が居なくなり街が閑散としてしまう、ということ。長い通勤労力をかけて会社に通うのではなく、都心部に家族が住み、賑わいや潤いのあるまちづくりができないだろうか。その大きな転換としてアークヒルズの開発があり、Vertical Garden Cityの発想へと繋がっていったのです。斜面を利用したサントリーホールがあり、屋上には緑に覆われたルーフガーデンがある。現在の森ビルスタイルは、アークヒルズにルーツがあると言って良いでしょう。

―ビルを緑化することによって、「ヒルズガーデニングクラブ」のような活動も生まれていますね。こちらはどのような活動をしているのですか?

市民参加型でアークヒルズと六本木ヒルズのガーデニング活動をおこなっています。季節に合わせた植物の植え替えをしたり、アークヒルズ内のカラヤン広場で会員の作品を展示したり。それから、アークガーデンなどを利用して「親子で"ヒルズ"のみどり探検ツアー」のような親子向けイベントも開催しています。これは「ヒルズ街育プロジェクト」の一環としておこなっているもので、五感を使って楽しみながら都市環境を学べるプログラムになっています。

―現在までの、緑化の成果は?

オープンスペースや建物の屋上を積極的に緑化することで、森ビルが開発した主要施設の緑比率は確実にアップしています。緑比率とは、開発の面積に対してどれだけ緑が覆われているかというのを数値で表したもの。六本木ヒルズは26.53%、アークヒルズは37.54%、元麻布ヒルズは44.32%、愛宕グリーンヒルズは44.43%、と20~40%の緑比率になっています。

木そのものが成長できるような緑化を進めていますから、これが10年20年後には5-10%伸びる可能性もある。実際アークヒルズは20年の歳月を経て、20Mを超える樹木も出ているわけです。今後は緑化の考えに"生物多様性"という考えもプラスして、より取り組みを強化していきたいと考えています。


エネルギーの面的利用で省エネを実現
運用と改修でさらなるCO2削減へ

―設備面について教えてください。省エネに関して、どのような工夫がされていますか?

当社は昔から新技術を積極的に取り入れる土壌がありますので、新しいシステムも積極的に採用しています。例えば、エネルギーの面的利用。建物それぞれに熱源・空調を持つより、一つのエリアで効率の良い設備を導入し、各建物に融通しようという考え方です。

六本木ヒルズではそのような考えで「大規模ガスコージェネレーション+地域冷暖房」のシステムを導入しています。これは、ガスで発電し、発電時の排熱を空調に利用するシステム。高効率システムを利用することで、約18%のCO2削減を実現しています。他にも、エネルギーの無駄使いをなくすエネルギーマネジメントシステムや蓄熱システムなどさまざまなシステムを、各施設で積極的に導入しています。

当社は、社会からも注目される比較的大規模な開発事業を行っています。環境面においても、トップランナーであり続けたいと考えています。今後も最先端の技術や独自の発想を取り入れながら、さらなる省エネを目指したいと思います。

―来年4月から、都のCO2削減義務制度も開始されますね。どのような対策をお考えですか?

対象となる事業所は全部で14棟。我々にとっては非常に厳しい条例ですが、運用と改修という2つの側面から対策を進めることになるかと思います。まずは、お金のかからない運用面をしっかりと見直していくこと。昼休みの消灯やクールビズの推進などがそれに当たります。また、各テナントの協力も必要になってきますので、テナントとの協議会を開催して制度の概要をご紹介しているところです。

改修は設備更新ということになりますが、ナンバービルと言われる古いビルから順次更新をしているところです。ただ、森ビルの施設は比較的新しい施設も多く、既にエネルギー効率の高い最新の設備を導入している建物が多いのも実情です。

現状と比較して削減しなければならないとすると、運用面での努力が相当必要になってくるでしょう。それから、映画館やホテルなどの商業施設をどうするか。空調が効かなければお客様の快適性は損なわれますし、非常にやりにくい分野ではありますが、社内で知恵を絞って取り組みたいと思います。

―都市開発と、エコや自然。相反するイメージを持たれがちだと思いますが、どのように伝える工夫をしていますか?

都市と緑はこれだけ共存できるんですよ、ということを丁寧に伝えていくしかないと思っています。私たちはまちづくりそのものがCSRだと思っていますし、都市開発を進めることが、環境へ貢献することにもつながると思っています。ですから、都市開発という事業を基軸に、その施設を使ったコミュニケーション活動を展開してきたいと考えています。

―環境推進室という部署は自ら手を挙げ立ち上げたそうですが、そこにはどんな想いがあったのですか?

それまでは設計部に所属しながら、ワーキングという形で環境推進活動に関わってきました。しかし「環境と緑」は当社が掲げるミッションの一つでもあるわけですから、もっと経営の根幹に据えて戦略的に活動する必要があるだろうと思ったのです。また、そうすることが当社の強みにもなると思いました。今までも、環境面ではさまざまな活動をやってきたわけですが、きちんと伝わり切れていない部分もある。社内・社外含め、私たちの考えや活動をもっと丁寧に伝えていきたいと思いました。

―専属部署で仕事をするようになり、何か変化はありましたか?

「環境」と一口に言っても内容は多岐にわたりますから、社内・社外問わず活動範囲が非常に広くなりました。不動産業界やビル業界の活動にも参加しますし、講演やパネルディスカッションにも参加をする。他にも、社内調整、行政折衝......などやるべきことは山のようにあります。さまざまな立場の人とお仕事をすることで、視野もだいぶ広くなったのではと思います。

―最後に、今後の抱負を教えてください

これからは、環境不動産の価値というのがキーワードになってくるかと思います。環境に配慮した建物が市場取引の中で賃料を含め反映されるような時代。欧米では既にそういう動きがあるようですが、日本ではまだこれからです。環境不動産が評価されるような世の中にするために、国の政策的な後押しも必要だと思いますが、私たちも努力を続けていきたいと思います。

―ありがとうございました。

編集後記:

「地域や社会からの賛同があるからこそ、都市開発を進めることができるんです」と語ってくれた武田さん。森ビルが掲げる「Vertical Garden City」とは、環境というテーマにおいても、これからの時代に合った新しい都市スタイルなのだと感じさせてくれました。東京都のCO2削減義務制度開始により、来年以降はより一層のCO2削減を求められるかと思いますが、理想の都市実現に向けさらなる活躍を期待したいと思います。


森ビルの環境への取り組み:http://www.mori.co.jp/company/urban_design/environment/
武田 正浩 
武田 正浩 :環境面においても、トップランナーであり続けたい

武田 正浩 (たけだ まさひろ)

森ビル株式会社 環境推進室 上席副参事/技術士(衛生工学部門)

ゼネコン勤務を経て、99年森ビルに入社。設計部にて六本木ヒルズやオランダヒルズの設備設計・監理に携わる。06年より環境推進ワーキングにも参加し、08年自ら環境推進室を立ち上げる。現在、環境推進室 上席副参事。

PAGE TOP

       
広告
写真で見るニュース
ecoolで商品・サービスをPRする
ecoolでは、環境関連の商品やサービスをもっとPRしたい、インターネットをビジネスに活用したい、商談のチャンスを増やしたい企業様の商品やサービス情報、プレスリリースを無料で掲載できます。
環境関連商品・サービスを探す
注目のキーワード
環境・CSR資料 無料ダウンロード
企業データ
  • 業種別
  • 企業規模別
  • 上場市場別
お知らせ