環境・CSR担当者訪問  

東京都 環境局

来年度から、東京都の『温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度』が開始される。対象は、都内約1400の大規模事業所。CO2排出量の削減を"義務"化した条例は全国でも初となるだけに、各方面から高い注目を集めている。 そこで今回は、本制度の詳細に迫ってみるため、制度の策定に深く関わった、東京都環境局の宮沢浩司さんに取材を行った。

    

取材/清宮恵子
写真/川上ふみ子

東京都 環境局 とうきょうと かんきょうきょく  URL:http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/
特色 都市と地球の温暖化対策、環境影響評価、自動車公害対策、大気汚染・水質汚濁・土壌汚染などの防止対策、自然の保護と回復、廃棄物対策とリサイクル推進
所在地 東京都新宿区西新宿2-8-1  都庁第二本庁舎
設立 1868年8月 東京府開庁、1943年7月 東京都制実施
業種 官公庁
代表者 東京都知事 石原慎太郎

義務化の対象は、オフィスビルなどの大規模事業所

―制度の詳細について伺っていきたいと思います。
今回の制度で対象となる「大規模事業所」について、具体的に教えて頂けますでしょうか?

前年度の燃料・熱・電気の使用量が原油換算で1,500kl以上の事業所を、大規模事業所として対象にしています。1,500klというのは、CO2排出量でいうとだいたい2,000~3,000tくらいでしょうか。社員規模でいうと2,000~3,000人、ホテルだと500~600室規模と言われていますが、各事業所の業態や運営状況によって大幅に異なりますので、一概に言うことはできません。

幸い今までのデータの蓄積がありますので、該当するおおよその事業所は把握しています。全体で、約1,400。内訳は、約1,100が業務系オフィスビル・ホテル・劇場・公共施設などで、残りの約300が工場系の産業部門となっています。

―制度を策定するにあたって、対象事業所とのコミュニケーションはあったのでしょうか?
対象となる事業所からの反応は如何でしたか?

策定にあたってはステークホルダーミーティングを3度ほど実施し、経済界やNPO/NGO・行政といった利害関係者と議論の場を設けました。また、制度の受ける影響が大きい業界団体などとは、制度化の過程でいろいろと意見交換をさせて頂いております。

その中でご指摘頂いた問題点や改善案は、全てとは言いませんが、大部分制度の中に反映できました。概ねの納得感は得られたのではないでしょうか。

―都内の大規模事業所と言えばテナントビルも多いかと思いますが、テナントビルへの対応はどのようになるのでしょうか?

テナントビルの場合、削減義務はオーナーさんにありますが、テナントの協力がなければ削減対策を進めることはできません。しかし、オーナーさんにとってテナントはお客様。協力を呼びかけにくい、という心理的な障壁がありました。

そこで私たちは、一定の大規模なテナントに関しては、テナント独自の計画書をオーナー経由で都に提出して頂くことにしました。その計画書を基に、都が直接テナントに指導、助言できる仕組みをとったのです。また、テナントとオーナーが対話できるきっかけづくりも仕組みの中に盛り込んでいます。


事業所との対話から生まれた、都独自の削減対策制度

―事業所からの声は、具体的にはどのように制度に反映されましたか?

例えば、トップレベル事業所への優遇措置。今回のような制度で不公平感が否めない制度は何かというと、"一律で"前年比10%削減などと義務付けてしまうことなんですね。事業所のこれまでの取り組みを何も見ない。するとある事業所にとっては「今まで頑張ってきたのに、さらに削減しなくてはいけないのか」となる一方で、ある事業所にとっては「今まで何もしてこなかったから、ラッキー」ということになってしまう。これではあまりにも不公平ですよね。EUの制度があれだけ批判されたのも、そこにあったわけです。

私たちには今までのデータの蓄積がありますから、事業所の今までの取り組み具合がよく分かる。そこで、一定の基準を満たした優良事業所については、削減義務率を半分もしくは3/4に軽減できるという特例を設けました。 都外クレジットやゆとりある削減計画期間の設定も、事業所からの声を反映した形です。

―削減計画期間は、5年間ということでしたね。

EU方式では1年間、アメリカのRGGIでは3年間ですから、5年というのはかなり余裕のある期間設定かと思います。例えばこれを1年間にした場合、景気や気候変動をまったく無視して、何が何でも削減義務を達成しなくてはいけなくなる。事業所側にとってはハードルの高いことでしょう。

そこで我々は計画期間を5年とし、柔軟な対応を図りました。もちろん毎年計画書の提出と排出量の報告はして頂き、計画が確実に実行されるよう都も指導をおこなっていく予定です。


―削減方法は、やはり設備更新ということになるのでしょうか?

抜本的にCO2を削減するという意味においては、やはり設備更新が大きなきっかけになるかと思います。ただし、どんなに良い設備を導入しても適切に運用されなければ決してCO2を削減することはできません。日常の意識をどれだけ高められるのか、ということも非常に大切です。

排出量取引制度の導入で、
事業所側にもメリットを

―設備更新にはそれなりの導入コストが必要かと思いますが、事業所側のメリットは何ですか?
また、設備更新に助成金やインセンティブはあるのでしょうか?

設備導入にあたって補助金を給付するというのも一つの考え方かも知れませんが、私たちの考え方はそうではありません。設備導入をすれば、必ずエネルギーコストは下がります。仮に償却期間が10年だとすれば、10年で導入した費用はそれなりにペイできるはずです。ですから設備更新を計画的にして頂くことは事業所にとってもメリットがあると考えています。また、頑張って削減義務以上のCO2を削減すれば、それは金銭価値となって取引ができるようになってくる。削減義務と排出量取引制度をセットで導入する意味は、そこにあるんですね。

単に義務の履行を求めるだけではなく、頑張れば頑張るほど事業所側も金銭的なメリットを受けられる。また、自助努力だけではどうしても達成できない事業所にとっても、排出量取引というオプションがあることによって、削減義務を達成できるようになるわけです。


―排出量取引について、もう少し詳しく教えてください

対象事業所がCO2排出量を自らで削減しきれないとなった場合、排出量取引というもう一つのオプションを用意しています。排出量取引の手法は4パターン。1つは、他の大規模事業所の超過削減量を取引するパターン。2つめは、都内中小クレジットといって中小規模事業所から購入するパターン。これは、中小規模事業所のCO2削減対策を促進する目的も含まれます。3つめは、再エネクレジット。再生可能エネルギーの利用拡大を進めるため、グリーンエネルギー証書などを取引するものです。最後は、都外クレジット。たとえば東京に大規模事業所を保有するA株式会社が都外にも同等の事業所を保有していた場合、都外事業所の削減量も都の削減義務量として一部認めるというものです。

これは事業所からの声を反映させた仕組みです。今後は排出量が金銭価値となって取引されるわけですから、その数値は正確でなければなりません。そのため、毎年報告して頂く計画書や排出量は、第三者検証機関の検証が義務付けられるようになります。


―仮に排出量取引を利用しても削減義務を達成できなかった場合、罰則はあるのでしょうか?

あります。5年間の計画期間を終え6年度末までに未達成の場合、義務不足量×1,3倍の排出量削減を期限つきで設けるという措置命令を出します。それでも削減義務を履行しない事業所に対しては、罰金50万円(上限)および氏名公表、さらに知事が命令不足量を調達しその費用を民事請求します。


2020年までに、2000年比25%削減が目標

―必ず達成させる、という強い意気込みを感じますが、東京都がこの制度に取り組む意義は何だと思われますか?

やはり環境行政の分野では東京都など地方自治体がずっと先陣を切って取り組んできましたし、それが私たちの使命でもあると思っています。豊かで快適な都市生活を送ることができる低炭素型社会をいち早く実現し、新たな都市モデルとして世界に発信すること。気候変動がもたらす脅威から、都民の生命や財産・健康を守ること......。東京都がこの制度に取り組む意義は非常に大きいと考えます。


―最後に、今後の目標および展開があれば教えてください。

東京都は、2020年までに2000年比25%のCO2削減を目標にしています。そのために必要な業務・産業部門の削減率は17%。来年度から始まるこの制度を第1計画期間とし、確実に実行できるよう覚悟を持って進めること。まずはそこに尽きるのでは、と思います。

今後の展開としては、その過程で起こったさまざまな対策をきちんとマニュアル化していくことも大切だと思いますし、東京都だけではなく他道府県に広めていくということも大切でしょう。また、日本国政府が導入するであろう削減義務および排出量取引制度とどのようにリンク・棲み分けしていくかということも大きな課題になってくるかと思います。

いずれにしても、この制度がひとつの大きなきっかけになることは間違いないだろうと思います。既に先進的なデベロッパーやゼネコンは環境配慮型不動産の価値を高めるような行動を取り始めていますし、テナントとオーナーのコミュニケーションが従来にないくらい活発になっているという話もあります。この取り組みを通して、さまざまなきっかけが生まれるよう我々も努力したいと思っています。


―ありがとうございました。

編集後記:

世界は確実に、次のステージへ進みつつある。取材をして感じたのは、その厳然たる事実でした。地球温暖化は、今この瞬間にも確実に進行しています。そのような現実の中で、私たちはどのような行動を取るべきなのか?今回都が施行した義務化の制度は、全国初の試み。
世界レベルで見ても、オフィスビルなどの業務部門を対象に含んだ制度はまだ前例がありません。(※イギリスのCRCという制度は、業務部門を対象に含む。スタートは東京都と同じ、4月から。)全世界が見守る『温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度』に、私たちも注目し続けたいと思います。


温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度の導入について:http://www2.kankyo.metro.tokyo.jp/sgw/jorei-kaisei20080625.htm
宮沢 浩司
宮沢 浩司:環境行政をリードする。それが私たちの、使命です(後編)

宮沢 浩司(みやざわ こうじ)

東京都 環境局 都市地球環境部 排出量取引担当課長

平成4年東京都入庁
総務局、産業労働局、環境局、知事本局等を経て、平成21年4月より現職。都の総量削減義務と排出量取引制度の企画・立案を担当。

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