環境・CSR担当者訪問  

東京ガス株式会社

日本を代表するエネルギー企業である東京ガス。渋沢栄一を祖とする同社は、いうまでもなく日本のガス産業の歴史そのものである。戦前戦後の激動を経て、天然ガスを軸に多様な活動を展開する東京ガスに、多くの人が注目している。 オール電化やIHなど家庭から炎が駆逐されつつある趨勢の中で、東京ガスはどこへ向かうのか。広報部CSR室長の八尾祐美子さんに話をうかがった。

    

取材/松崎辰彦
写真/川上ふみ子

東京ガス株式会社 とうきょうがすかぶしきかいしゃ  URL:http://www.tokyo-gas.co.jp/
特色 「快適な暮らしづくり」と「環境に優しい都市づくり」に貢献し、「安心・安全・信頼」のブランド価値を高めていきます。
所在地 東京都港区海岸1‐5‐20
設立 1885年10月1日
業種 ガス
資本金 1,418億44百万円(平成22年3月31日現在)
売上高 連結:1兆4,157億18百万円(平成21年度)
代表者 代表取締役 社長執行役員 岡本 毅
従業員数 連結:15,539人(平成22年3月31日現在)

企業活動すべてがCSRである

― 東京ガスのCSRに対する基本的な理念をお教え下さい

東京ガスは、"CSRという活動が会社の他の事業と隔絶して存在するわけではない"と考えています。企業活動そのものが、CSRであると捉えています。
東京ガスの使命とは環境にやさしい天然ガスを安定的に供給するという公益性の高いものであり、その使命を果たすことがすなわちCSRであると思います。日々の仕事がそのままCSRであって、他の業務から離れて特別にCSRの活動があるわけではありません。私たちCSR室の重要な役割の一つは、日々の活動を離れて企業の社会的責任、つまりCSRが存在するわけではないことを、自社の社員にしっかり理解させることです。

 

― 東京ガスが扱っている天然ガスは、とくに環境にやさしいと言われています。その理由はなんでしょうか

天然ガスは石炭、石油よりも燃焼時のCO2の量が少なく、さらに硫黄酸化物はまったく排出しません。
電気とガスを比較しますと、電気の多くは石炭や石油といった燃料を燃やして作る二次エネルギーであって、その生成プロセスでは多くのCO2が排出されます。一方、一次エネルギーであるガスはその生成過程でCO2を出すことはありません。また電気は送電の過程でロスが大きく、発電所から出た電気も最終的には40%ほどになってしまうと言われています。導管で送られるガスは、そのようなロスはなく、ほとんど100%が送り届けられます。こうしたことを勘案していただくと、ガスが環境負荷の低い、非常に効率のよいエネルギーであることをご理解いただけると思います。


ガスと電気を組み合わせて最善のシステムを作る

― 電気とガスは昔から競合しているように思えます。それぞれ長所や短所があると思いますが、どのような「棲み分け」をお考えになられているのでしょう。

私どもはエネルギーに関して「棲み分け」というとらえ方はしていません。多様なエネルギーに関して、「ベストミックス」という考え方をとっています。
もともと資源が少ない日本では、さまざまな形でエネルギーを作らなければなりません。日本全体のエネルギーの需要を、すべて原子力発電でまかなえるかというと現時点では難しいわけですし、一方、ガスですべてまかなえるわけでもありません。ですからエネルギーの最適の組み合わせを考えて、もっとも効率のよい、環境負荷の低いエネルギーの仕組みを作ることが必要であると考えています。 そうしたエネルギーの編成を、私どもは『スマートエネルギーネットワーク』と呼び、その実現に向けて、現在、最大限の努力を傾注しているところです。

― 東京ガスの再生可能エネルギーへの取り組みが注目されていますが、くわしくお教え下さい

東京ガスでは、家庭用燃料電池と太陽光による発電を組み合わせたシステムを『ダブル発電』と呼んで、その普及を推進しています。太陽光発電のネックは、天候に左右されることです。曇っている日や、雨の日は発電ができないのが太陽光発電の弱点です。 『ダブル発電』とは、晴天時は太陽光、曇天や雨のときは燃料電池を使用して、電気の供給を確保しようというものです。
ガスのよいところはためておけることで、必要なときに必要なだけエネルギーとして使えることです。そして太陽光で作った電力は、電力会社に売電できますから、経済的にもメリットがあります。 また東京ガスが最近、力を入れているのが太陽熱を使って給湯や空調を行うシステムです。再生可能エネルギーの中では太陽光がクローズアップされていますが、実は太陽熱の方が効率のよいエネルギーと言われています。好天のときには太陽光でお湯を作り、太陽が隠れたときにはガスでお湯をわかすようにすれば、限られた天然資源の有効利用につながり、環境への負荷も軽減することができると考えています。
もちろん、再生可能エネルギーはまだまだ開発途上の技術ですから、初期投資にも費用がかかります。しかし、そうしたコスト面でも少しでも負担が少なくなるよう、現在技術の研究を進めている最中です。


安全を確保するためにさまざまなシステムが構築されている

― ガスは、安全性をどう確保するかというのが大きな問題と思われます。ガス事故を防ぐために、どのような取り組みをしているかお教え下さい

ガス会社にとって、保安は最も重要な事業です。東京ガスでは3年に一回、「ガス設備定期保安点検」を行い、利用者の皆様のお宅に伺ってガスの設備をチェックさせていただいております。 そして不測の事態に備えて、24時間365日体制で待機している部署があります。"ガス臭い"といったお客様からの連絡を受けて、現場に急行して問題解決に当たります。彼らは「自分たちこそが東京ガスのCSRである」という誇りをもって、仕事をしています。
一方で、東京ガスは高度な安全機能を持つガス器具の開発にも力を入れています。 一般に「地震がきたらガスの火を止めろ」と言われてきましたが、現在は震度5程度以上の地震を感知すると自動的にガスをストップさせる仕組みが組み込まれており、まず身の安全を確保していただけます。また通常の状態でも、異常に長くガスが出続けるとやはり自動的にストップさせる機能があり、ガス漏れの危険を軽減します。さらにガスの警報装置や不完全燃焼防止装置など、現在のガス設備にはさまざまな安全機能が装備されており、様々な角度から安全水準のレベルアップを図っています。

― 廃棄されるガスレンジなどの機器は膨大です。こうした廃棄物の処理はどう対処していますか

東京ガスの関連会社で販売したガス器具に関しましては、法律に則ってお客様からのお申し出があれば回収し、分解し、まだ使える部品があれば徹底してリサイクルしています。このシステムは「スリムス」と名付けられており、行政からも見学にこられています。


 

炎を通して真の「食」を味わう――「キッズ・イン・ザ・キッチン」の試み

― 東京ガスは環境教育などにも力を入れているとお聞きしています

エネルギー教育に関して、東京ガスはお手伝いをさせていただいております。 小中学校に出張授業という形で社員が出向いてさまざまな話をさせていただき、現在までにおよそ毎年2000クラスの授業を行ってきました。
理科や社会科、環境の授業でエネルギーや都市ガス事業についてお話をしています。理科の授業では燃料電池についての説明もあります。 燃料電池はご存じのように水の電気分解とちょうど反対の反応です。酸素と水素を反応させ、電気と熱を作るという仕組みですが、それを説明するために小さな模型を使い、実際に酸素と水素から電気を作る実験を生徒さんの前で行っています。こうした実験を通して、エネルギーに対する理解を広めています。

また私どもは"自分たちは各家庭の台所の火を預かっている"という自覚があり、大正時代からすでに各地域で料理教室を開くなどの活動を行ってきています。
現在、力を入れているのは食育で、「キッズ・イン・ザ・キッチン」というタイトルでお子さんや保護者の皆さんに、小さなころから調理に親しみ、食の楽しさ、大切さを実感してもらうという活動を続けています。料理を通じて、子どもたちの五感を育成し、さらに食の自立を学んでほしいというのが狙いです。
人間は5歳までに味覚が決まると言われています。昨今、インスタント食品と手作り料理のおいしさの違いがわからない子どもが増えている現状に、台所の火をお預かりする私たち東京ガスは危機感を抱いています。味覚体験コースで、それまで嫌いだった食べ物を、すりおろしたりするなど食感を変えることで口にできるようになる子がいます。料理教室で自分で作った料理を口にして、「野菜は嫌いだけど、自分で料理したから食べられた」と話す子がいます。こうして次代を担う子どもたちに、炎を使った真の食を経験してもらい、人間としての感性を生き生きと育んでもらえたらと思います。

東京ガスの考える『エネルギーの未来』とは

― 東京ガスの考える、エネルギーの未来とはどういうものですか

快適な暮らしを実現しながら、地球温暖化を防止し、持続可能な低炭素社会へと移行するためには、新しいエネルギーシステムの構築が不可欠です。そこで東京ガスが提案しているのが先程も申し上げた『スマートエネルギーネットワーク』です。
これはガスコージェネレーションシステムに、太陽光・太陽熱、バイオマスなどの再生可能エネルギーや、清掃工場の廃熱などの未利用エネルギーを組み合わせ、電気だけでなく熱もネットワーク化して、最適に制御する考え方です。将来的には、水素を活用することで、さらなる省CO2・省エネルギーを図っていきます。
環境問題はまったなしです。一企業の利益を超えて日本全体、あるいは地球規模で考えなければならない問題です。その観点からも、環境負荷の低い天然ガスを中心にした社会システムを考えることは大変有意義なのではないかと思われます。そうした大きな枠組みの中で自分たちに何ができるかを考えることが、公益企業である東京ガスの使命ではないかと、私どもは考えています。

― 本日はありがとうございました。

 

編集後記:

「東京ガスは女性にとって働きやすい職場です」そう話してくれた八尾さん。ご自身が学生時代、社会貢献の道を模索して、東京ガスへの入社を決められたそうです。八尾さんのように志ある社員は、実は東京ガスには多いとか。ガスと電気はライバル同士、互いにシェアを争っている相手ではと考えがちですが、差し迫った問題である環境問題においては、利潤を超えた協力関係を結んでいることがわかりました。ガスを中心としたトータルエネルギー産業を目指すという東京ガスは、今後も可能性ある未来を切り開いていくことでしょう。


八尾 祐美子
八尾 祐美子:各種エネルギーを編成して最善のシステムを作ります

八尾 祐美子(やお ゆみこ)

東京ガス株式会社 広報部 CSR室

1993年入社。旧中央事業本部(旧組織・東京の中心部8行政区を担当していた事業本部)における企画業務を経験後、1999年から2004年までパークタワーホテル株式会社へ出向、パークハイアット東京にて会員制スパ・フィットネスクラブのマネジメントを担当。2004年から2008年まで海外事業部を経て2008年4月から現職

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