世界の環境政策を取材  

駐日英国大使館

 

『2050年までに80%削減』を目標に、低炭素社会のリーダーを目指す(前編)

英国が2010年4月から、義務的国内排出量取引制度であるCRC省エネ制度 (CRC Energy Efficiency Scheme)の試行をスタートさせた。ヨーロッパでは既に欧州排出量取引制度(EU ETS)という制度が開始されているが、英国のCRCは、EU ETSがカバーしていない民生部門などを対象とすることで、温室効果ガス排出量の削減をさらに加速する狙いだ。

2008年には、気候変動対策のための世界初の法律「気候変動法(Climate Change Act 2008)」を成立させた英国。2050年までにすべての温室効果ガスの排出量を1990年比で少なくとも80%削減するという数値目標を発表している。急速に低炭素経済への転換を目指す英国は、この高い目標にどのように立ち向かっていくのか。駐日英国大使館の環境・エネルギー部長、キャシー・リーチさんにお話を伺った。

取材/清宮恵子
写真/川上ふみ子

世界で初めて法律化した
英国の「気候変動法」

―まず初めに、英国の気候変動対策におけるこれまでの実績についてお伺いさせてください。
e_0617_001_s.jpg英国の気候変動対策はこれまでに、1990年比で21%の排出量削減を果たしてきました。これは京都議定書における削減目標の2倍近い実績です。また、低炭素製品およびサービスを提供する企業には現在80万人以上が雇用されています。

―2008年には、気候変動対策として世界初となる「気候変動法」を成立させていますね。そこではどのような数値目標を設定していますか?

2020年までに、CO2排出量を1990年比で34%削減することを中間目標に、2050年までに80%削減することを目指しています。これは世界で初めての法的拘束力のある数値目標であり、この目標を軌道に乗せるため2022年までの5年ごとの「カーボン・バジェット Carbon Budget(炭素削減計画)」を発表しています。

―そもそも気候変動法は、どのような目的で制定されたのですか?

気候変動法の目的は2つあります。1つめは、炭素の管理を向上させ、英国の低炭素経済への移行を促進すること。2つめは、国際社会に対して英国のリーダーシップを発揮し、ポスト2012年の国際合意に基づいた世界的な排出削減についても、その責任を果たす強い意志を示すことです。法律として定めることで、政権交代などに左右されず、長期的かつ確実に気候変動対策に取り組むことができるのです。この法律には、ほとんどの国民が賛成だったと言って良いでしょう。事実、法律の成立においては、与党・野党ともに賛成。反対した議員はたった3人しかいなかったのです。

カーボン・バジェットで
低炭素社会への道のり示す

―気候変動法の、おもな特徴について教えてください。

e_w0617_002_s.jpg一番大きな特徴は、先に述べたように法的拘束力のある数値目標を設定していることです。そしてその目標を実現するために、カーボン・バジェットを設定している。カーボン・バジェットとは、2050年までの道筋を示すために、5年ごとの3期間の温室効果ガス排出量を設定する英国の排出キャップ。1度に3つのバジェット(15年分)の発表を政府に義務付けることで、低炭素経済への移行について、英国の産業界と社会に明確な長期的方向性を与える役割も果たしています。

また、長期目標達成に向けては、政府から独立した専門的顧問機関「気候変動委員会 Committee on Climate Change」も創設され、政府にたいしてさまざまな提言、報告をおこなっていきます。この委員会の設置により、気候変動対策の透明性と説明責任を確実に担保するようにしているのです。

―カーボン・バジェットでは、どのような道筋が示されているのですか?

2009年4月22日に、最初の3期間(2008‐12年、2013‐17年、2018‐22年)のカーボン・バジェットが発表されました。その計画では、第1期間までに1990年比22%の削減、第2期間までに28%の削減、そして2020年までに34%の削減が設定されています。

―これらの目標は、どのように達成していくのですか?

さまざまな方法を通して達成していく必要があります。具体的には、欧州の排出量取引制度であるEU ETS、国内の排出量取引制度であるCRC、そして再生可能エネルギーへの取り組みなどが挙げられます。

英国の特徴活かした洋上風力発電で
再生可能エネルギー率UPを狙う

>>後編に続く

担当者様プロフィール
キャシー・リーチ氏:『2050年までに80%削減』を目標に、低炭素社会のリーダーを目指す(前編)

キャシー・リーチ氏

駐日英国大使館
環境・エネルギー部長

英国ケンブリッジ大学卒業後、94年より環境NGOに所属。世論および社会調査を担当する。2000年に英国外務省に入省。01年から04年まで在露英国大使館にて安全政策や人権問題を担当。05年には領事局に異動すると同時に、日本語の語学研修を開始。07年から駐日英国大使館環境・エネルギー部の部長として、気候変動政策やエネルギー政策に携わっている。

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