世界の環境政策を取材  

駐日英国大使館

 

『2050年までに80%削減』を目標に、低炭素社会のリーダーを目指す(後編)

英国が2010年4月から、義務的国内排出量取引制度であるCRC省エネ制度 (CRC Energy Efficiency Scheme)の試行をスタートさせた。ヨーロッパでは既に欧州排出量取引制度(EU ETS)という制度が開始されているが、英国のCRCは、EU ETSがカバーしていない民生部門などを対象とすることで、温室効果ガス排出量の削減をさらに加速する狙いだ。

2008年には、気候変動対策のための世界初の法律「気候変動法(Climate Change Act 2008)」を成立させた英国。2050年までにすべての温室効果ガスの排出量を1990年比で少なくとも80%削減するという数値目標を発表している。急速に低炭素経済への転換を目指す英国は、この高い目標にどのように立ち向かっていくのか。駐日英国大使館の環境・エネルギー部長、キャシー・リーチさんにお話を伺った。

取材/清宮恵子
写真/川上ふみ子

英国の特徴活かした洋上風力発電で
再生可能エネルギー率UPを狙う

―英国の低炭素社会を実現する主要な方法のひとつとして、再生可能エネルギーを挙げていますね。
e_uk_06241.jpgはい。政府は再生可能電力を2020年までに現在の5倍、電力供給の約30%まで増加すると発表しました。新しい低炭素技術の研究開発には4億500万ポンドを投じ、なかでも洋上風力発電には力を入れていく予定です。
―洋上風力発電は、英国の土地や気候に合ったエネルギーということなのでしょうか?

そうですね。長く続く海岸線、浅瀬の海、つよく吹く風......これら英国の気候条件が洋上風力発電に適しているのです。昨年はデンマークを抜いて世界一の洋上風力発電国となりました。その発電量は家庭で消費する電力に換算すると、およそ150万世帯分。さらに550万世帯分に相当する電力を洋上風力発電で賄おうと研究開発に力を注いでいるところです。

―他にはどのような低炭素技術を開発・利用していくお考えですか?

今後力を入れていく分野としては、原子力エネルギーの開発が挙げられます。現在、原子力エネルギーによる発電は13%程度ですが、政府は新たな原子力発電所の計画および規制認可プロセスを整備している段階です。また、二酸化炭素回収・貯留(CSS)技術の開発にも力を入れていく予定です。
英国は電力の約4分の3を天然ガス(約45%)と石炭(約32%)によって発電しており、電力部門と重工業部門だけで英国における排出量の35%を占めています。これを2050年までに、ほぼすべての電力を再生可能エネルギー、原子力エネルギー、または二酸化炭素回収・貯留(CSS)を伴う化石燃料エネルギーから供給するよう転換する必要があるのです。


排出量取引制度の活用で
大幅な排出量削減を

―電力と重工業からの排出量を制限する、という意味ではEU ETSも主要な方法のひとつになりますか?

はい。英国の気候変動とエネルギー政策の多くは、EUの政策の一環として遂行されています。EUは2020年までに温室効果ガスの排出量を20%削減するとしており、うち17%は再生可能エネルギーやエネルギー効率の向上、EU ETSにより、EU域内で達成する必要があるのです。EU ETSは、EU全域で約12,000の施設が対象となっており、おもに発電と鉄鋼、セメント、化学薬品といったエネルギー集約部門が対象です。これらの部門を合わせるとEU全体の排出量の40%以上にのぼりますから、排出量を制限する方法のひとつとして非常に重要な制度といえるでしょう。重工業系の企業が公平に負担をする、という点でEU ETSはとても良い制度だと考えています。

―それとは別に、国内の排出量取引制度であるCRC省エネ制度(CRC)もスタートしました。

CRCは英国内のビジネス・公共セクターの企業・団体を対象とした、義務的排出量取引制度です。2010年4月に試行期間3年間が開始され、その後本格的に導入されます。対象は、EU ETSや気候変動協定(CCAs)など現行制度の対象から漏れていた分野。スーパーマーケットなどの小売業や銀行、ホテルなどおもに民生部門を対象とします。具体的には、年間6,000MWh(600万kWh)以上を消費している組織が対象です。

―制度の策定にあたり、EU ETSの長所や反省点など何か参考にされましたか?

EU ETSは世界初の排出量取引制度でしたので、もちろんそこから多くを学びました。EU ETSの事例から分かったことは、オークション制度が排出量削減を促進するベストな方法であるということ。CRCは、エネルギー使用による排出に関し排出権の購入を義務付け、各企業・団体の排出枠は入札で決まります。クレジット価格は、CRCの3年間の導入期間中のみ、トンCO2あたり12ポンド(約1,800円)と固定されますが、その後は毎年入札で決められる予定です。また、得られた収益はすべて参加者に還元されますから、排出削減への意欲を高めることになると期待しています。



民間からうまれた環境活動
「10:10キャンペーン」

―最後に、民間レベルでの活発な動きなどありましたら一つご紹介ください。

英国のガーディアン紙が協力、映画監督フラニー・アームストロング氏が呼び掛けの中心人物となって昨年発足した10:10キャンペーン(http://www.1010uk.org/)は、大きなムーブメントとなっています。個人、企業、組織が一体となって2010年末までにCO2排出量を10%削減しようと呼びかけるもので、賛同者はWEB上で署名・誓約をし、10%削減をめざして生活や活動をするというものです。
(※編集部調べ:3月30日現在、個人5万8千人以上、企業2,300以上、教育機関1,500以上、その他の団体1,200以上が参加)
2012年には、ロンドンオリンピックが開催されます。このオリンピックは、間違いなく環境を意識したグリーンオリンピックとなることでしょう。政府や企業、国民がますます一体となり、より一層環境問題に取り組んでいけたらと願っています。


―ありがとうございました。

編集後記:


英国は、国土も排出量も世界最大ではありません。しかし低炭素社会への移行に向け、あらたな一歩を踏み出しました。それぞれの国や地域には、それぞれの土地や風土に見合った知恵があるはずです。私たちもそれぞれの国や地域から多くを学び、何らかの行動につなげていければと思います。ecoolでは、今後世界の取り組みにも注目し、その活動を紹介していく予定です。


担当者様プロフィール
キャシー・リーチ氏:『2050年までに80%削減』を目標に、低炭素社会のリーダーを目指す(後編)

キャシー・リーチ氏

駐日英国大使館
環境・エネルギー部長

英国ケンブリッジ大学卒業後、94年より環境NGOに所属。世論および社会調査を担当する。2000年に英国外務省に入省。01年から04年まで在露英国大使館にて安全政策や人権問題を担当。05年には領事局に異動すると同時に、日本語の語学研修を開始。07年から駐日英国大使館環境・エネルギー部の部長として、気候変動政策やエネルギー政策に携わっている。

PAGE TOP

       
広告
写真で見るニュース
ecoolで商品・サービスをPRする
ecoolでは、環境関連の商品やサービスをもっとPRしたい、インターネットをビジネスに活用したい、商談のチャンスを増やしたい企業様の商品やサービス情報、プレスリリースを無料で掲載できます。
環境関連商品・サービスを探す
注目のキーワード
環境・CSR資料 無料ダウンロード
企業データ
  • 業種別
  • 企業規模別
  • 上場市場別
お知らせ