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駐日デンマーク大使館

 

持続可能なエネルギーへの転換により、2050年までに化石燃料からの脱却を実現する

先進的な環境国であるデンマークは、2010年9月28日、デンマーク気候変動委員会による環境に関する調査レポート、「Green Energy」(以下、「グリーンエネルギー」)を発表した。本報告書には、これからの環境改善につながる、さまざまな提言が盛り込まれている。同国はこれを政策とし、化石燃料への依存からの100%の脱却と、温室効果ガスの排出削減に取組む方針だ。今後の環境への取り組みについて、駐日デンマーク大使、フランツ=ミカエル・スキョル・メルビン氏に話を伺った。

取材日/2010年10月7日
取材/松本美菜
写真/川上ふみ子

「化石燃料への依存ゼロ」は温室効果ガスの排出と
資源の枯渇の両方を解決に導くカギとなる

―デンマークの気候変動政策委員会が、環境に関する報告書を発表しました。
そもそもなぜ、報告書を作成することになったのでしょうか。その経緯をお聞かせください。

Danmark_018_s.jpg今、デンマークや日本を含む国際社会は2つの課題に直面しています。1つは地球温暖化をもたらしている温室効果ガスを削減しなくてはならないこと。もう1つは、経済成長により、エネルギー資源の需要が急増し、資源の枯渇、化石燃料の価格の高騰や需給バランスの崩壊をもたらしていることへの懸念が挙げられます。
デンマークは、エネルギー供給の約80%を、石油や天然ガス等の化石燃料を燃やすことでまかなっています。これらは温室効果ガス排出の原因であることはもちろんですが、同時に北海にある資源の枯渇をも招いているのです。
デンマークとして、このような問題の解決のために採るべき道は1つしかありません。即ち、化石燃料への依存から脱却することです。こうした状況を踏まえ、デンマーク政府は、国として何ができるかの検討や評価等を行うよう、気候変動政策委員会に要請しました。

―気候変動政策委員会の役割を教えてください。

報告書を作成したデンマーク気候変動政策委員会は、政府により2008年に設置されました。メンバーは10名、その経歴はさまざまですが、コペンハーゲン大学の教授やエコノミスト、リサーチの専門家等から構成されています。
委員会の目的は、デンマークの環境について、消費エネルギーにおける炭素ガスの排出をゼロにするために、国としてどのようなことが実現できるのか、また、環境や経済面において、どのような効果があるのかについて検討・評価し、提言を行うことにあります。
委員会は、その仕事の多くを既存のテクノロジーを将来にわたり、どのように使い、どれくらいのコストが発生するのかといったことの評価に費やしました。その結果、報告書「グリーンエネルギー」の中で、化石燃料への依存を無くすことにより、2050年までに1990年比で温室効果ガスを約75%程度まで削減することが可能であると述べています。
しかし、2050年、すなわち今から40年後のことについて、詳細な計画を策定することは容易ではなく、かつ、現実的なことでもありません。そこで、委員会は2025年までの中期目標を設定し、その中で、さまざまな提言を盛り込んでいます。


次世代のエネルギー政策で
風力発電とスマートグリッドを推進する

―報告書「グリーンエネルギー」の概要をお聞かせください。

報告書「グリーンエネルギー」は、その中で、デンマークが目指すべき環境について、2050年までに石油、天然ガスといった化石燃料への依存から脱却し、風力発電やバイオマスなどの再生可能エネルギーへの転換を目指すための道筋を示しています。
その中で、化石燃料からの転換を図るための核となる要素が2つあります。1つは、電化の推進です。電化により最も大きな効果を発揮すると考えられているのが、交通・運輸部門です。この分野で、ガソリン車やディーゼル車から化石燃料に依存しないEV(電気自動車)への転換を図ると、旅客・貨物輸送において2050年のエネルギー利用は、60%~70%の省エネ効果があると考えられます。現在、私たちが使うエネルギーの20%は電力でまかなわれていますが、将来は少なくても40%、EVが普及すれば、さらに70%にまで引き上げることが可能です。
私たちは、電気は極めて柔軟で可変性に富み、かつ、効率的な資源であるという基本的な考えを持っています。現在、デンマークでは、すべての国民が電気の恩恵を受けています。しかし、問題なのは、電気を発生させるために化石燃料を燃やし、二酸化炭素といった温室効果ガスを排出しているという事実です。ですから、その根本を再生エネルギーシステムで改善しなければなりません。
もう1つは効率的なエネルギーシステムを構築し、エネルギー消費の総量を抑制することです。多くの国々が脱炭素社会の実現のために、多くの時間とお金、それに労力を費やしていますが、デンマークはそれを実現することができると信じています。

―化石燃料からの転換を図るための特長的な技術にはどのようなものがありますか?

期待される技術がいくつかあります。1つは、風力発電技術です。現在、デンマークの消費電力の約20%は風力発電によるものですが、2050年には、消費電力の約60%~80%が風力発電でまかなわれると見ています。特に、デンマークの持つ洋上風力発電の潜在力は高く、今後、再生可能エネルギーの中心になると考えられています。
しかし、風力発電により得られるエネルギー量は天候に左右されますし、エネルギーを消費する側にも、毎日決まった量の需要があるというわけではありません。そのため、エネルギーの使い方と蓄え方を最適化させ、需給バランスを図る必要があります。
そこで注目されるのが、次世代送電網、いわゆる「スマートグリッド」という、知的エネルギーシステムです。これは、エネルギーを安定的に供給するための仕組みで、スマートメーターによる電力制御や高性能な蓄電機能等を保有し、情報技術を使い、システム統合することで、必要な時に安定的にエネルギー供給ができるようにする技術です。
この中では、風力発電を動力とするヒートポンプも重要な役目を果します。ヒートポンプには、水を媒介とするエネルギーシステムが用いられますが、それにより、電気の需要が少ない時には、水を温め、エネルギー源としてタンクに貯蔵しておくことが可能になります。それにより生み出される熱エネルギーを一般家庭に供給し、暖房に利用することができるのです。もちろん、地域暖房にも応用できる仕組みです。


新たな仕組みを導入する際には
国民に対し、納得のいく説明を

―新しいエネルギーシステムを導入すると、デンマークの国民は新たな負担を強いられることになるのですか?

Danmark_0144_s.jpg興味深いことに、長期的に見た場合、報告書で提言されている、再生可能なエネルギーへの転換を進めた方が、2008年比で、むしろ家計の費用負担は軽減されるか、増えてもその差は僅かであるという調査結果が得られています。もちろん、エネルギーを消費し、カーボンを排出するということについて、国民は実際の対価を支払わなくてはなりませんし、新たな設備投資には、初期費用もかかります。それでも、新エネルギーに転換した後の光熱費の低減等により、トータルで見れば、2008年当時と比較しても、ほとんど変わらないと試算しています。
現状では、多くの国々がそうであるように、デンマークも、エネルギーの種類により、価格構造が異なります。そのため、国民はそれぞれのエネルギーシステムに対し、それぞれに費用を負担しなければなりませんが、委員会は、まず、そのようなシステムを変える必要があると考えています。それに先立ち、私たちは、正確にどれくらいのエネルギーがどの程度温室効果ガスを排出し、それらをどれくらい新しいエネルギーに転換し、どれくらいのコストがかかるのかということを考えなくてはなりません。消費者、工場、民間企業、政府等すべてのセクターでは、エネルギーの使い方も異なりますから、全体をニュートラルにするためには、それらのバランスも考慮する必要があるでしょう。

―再生可能なエネルギーの仕組みを普及させるための方策として、どのようなものが挙げられますか?

2つの方法があると思います。1つはエネルギー税の導入です。これは人々に対し、最も有効なテクノロジーを選択させるために関心を持ってもらう、その動機づけをするという狙いがあります。
もう1つ、新たな制度や仕組みを導入する際に重要なのは、産業界や国民に対し、専門家によるきちんとした評価を公開しなければならないということです。たとえば、新しいエネルギーへの転換のために、新たな投資をしなければならない場合や、高額な機器を購入する必要がある場合、どれくらいの支出が伴うのか、どのようなメリットがあり、投資した費用を何年で回収できるのか、また、システムの説明といったことも併せて、きちんと公表するのです。加えて、それらの情報へのアクセスをしやすくし、確実に行うことで信頼を得られるよう、努力しなければなりません。


お互いを補完し合い
協力関係を活発化

―デンマークと日本はどのような協力ができるでしょうか。

さまざまな形での協力が可能だと思います。たとえば、日本はEVの部品や車自体の開発については、先端を行っていますが、それだけではEVを売ることはできません。なぜなら、システムとして非常に優れていたとしても、それを走らせるための充電設備や保守・メンテナンス等のインフラが整っていないからです。
一方、デンマークは、EVの充電設備の設置といった、インフラの整備に力を入れています。2010年は既に日本企業との覚書を締結し、両国の協力関係のもと、EVの普及を目指す動きを活発化させています。
脱炭素社会を目指す過程で、さまざまなコア技術が必要とされます。日本の先端技術をデンマークの環境政策に活用したいですね。


―本日はありがとうございました。

編集後記:


かつてはデンマークも日本同様、1970年代には石油資源の海外からの輸入に99%依存していたそうです。エネルギーの大部分を輸入に頼ることは、その調達・供給面において、高いリスクを伴います。そこで、オイルショック以降、同国は風力発電やバイオマス等への転換を進めるとともに、さまざまな政策や制度を整え、他国から石油を輸入することへの依存度を減らす工夫をしました。その結果、現在ではエネルギーを100%自国でまかなうことに成功しています。同じようにオイルショックを経験した日本は、省エネ化が進みましたが、未だにエネルギー資源のほとんどを海外からの輸入でまかなっています。依存を低減させるのは容易なことではありませんが、私たちがデンマークから学ぶべきことは多いのではないでしょうか。


外部リンク【グリーン・デンマーク】グリーン・エネルギーポータルサイト
担当者様プロフィール
フランツ=ミカエル・スキョル・メルビン氏:持続可能なエネルギーへの転換により、2050年までに化石燃料からの脱却を実現する

フランツ=ミカエル・スキョル・メルビン氏

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駐日デンマーク大使

コペンハーゲン大学法学部卒業、1984年デンマーク税務(財務)省入省、その後、同外務省、ボンデンマーク大使館・政治経済部秘書官、デンマーク外務省アフリカ局、北京デンマーク大使館・代理大使、デンマーク外務省政策企画局副局長、同ビジネス開発局長、カブールデンマーク大使等を歴任、2008年駐日デンマーク大使に就任。

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