世界の環境政策を取材  

駐日オランダ王国大使館

 

CO2の再利用やスマート・シティの実現化に取り組むオランダの環境政策

オランダは面積41,500平方キロメートル、人口は約1,600万人。人口密度が高く、産業エリアが密集していること等から、長年にわたり、大気汚染や水質悪化等の問題があったという。今、EU加盟国として、環境問題に積極的に取り組む同国はどのような施策に重点を置いているのか、駐日オランダ王国大使館経済部二等書記官、ピーター・テルプストラ氏に話を伺った。

取材/松本美菜
写真/川上ふみ子

EUの環境目標達成に向け、
農業分野に力を入れるオランダの取り組み

―EUの加盟国として、オランダはどのように環境問題に取り組んでいるのですか?
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ご存知のように、EUは2020年までに①1990年比で20%の温室効果ガスを削減、②域内の消費エネルギーの20%を再生可能エネルギーにより供給、③エネルギー効率を20%向上させるという目標、いわゆる20-20-20パッケージを打ち出しています。
EU加盟国として、オランダが目指すのは、持続可能な社会を実現させるということです。そのために、温室効果ガスの削減や廃棄物のリサイクルの促進、さらに、生物多様性の保護等のさまざまな取組みを進めていますが、国内の環境政策の約85%はEUとして打ち出している方針に準拠しています。


―独自の取り組みはありますか?

たとえば、温室効果ガスの排出量を削減するために、排出権取引制度を活用することができますが、この仕組みは重工業や発電所といった特定の分野に使える制度です。そこで、オランダでは、政府が個別に他のセクターとも協定を結び、温室効果ガスの削減ができるよう、さまざまな施策を進めています。 たとえば、農業分野を例に挙げることができます。このセクターは土壌、園芸、温室(ガラスハウス)の利用などにより、オランダが排出するCO2のうち、約25%を排出しています。そこで、政府は農業分野におけるCO2の削減を推進し、2020年までにカーボン・ニュートラルにすることを目指しています。


―具体的にはどのような施策を推進しているのですか?

オランダには園芸用の温室が多くあります。そのため、今進めているのが、温室を利用して太陽光を集め、蓄積したエネルギーをヒートポンプと熱交換器を用いて、必要に応じ、ハウス内の暖房や冷房に利用するという方法です。これらにより、化石燃料の節約につながり、CO2の排出を65%削減できるとしています。

私たちはまた、CO2の再利用にも取り組んでいます。オランダ南部に化学産業などが集まる重工業地帯があり、多くのCO2が排出されています。そこで、排出されたCO2を回収し、パイプラインで園芸施設(温室)まで運ぶのです。CO2は農作物の光合成を促進させ、収穫の増加や作期の短縮にもつながる重要な要素でもあります。5年~10年ほど前までは、CO2を発生させるために天然ガスを燃やしていました。しかし、この仕組みを使えば化石燃料の使用や余分なCO2の発生を削減させることができます。
温室を、エネルギーを消費する施設から、自らエネルギーを生み出す施設へと変貌させることが重要なのです。


日常生活でエネルギーの使い方を意識させる
スマートシティ・プログラム

―オランダではEUの中でも先行してスマート・シティの実現化に向けた動きが活発化していますね。

スマート・シティの構想については、2006年から検討が始まりました。これは、アムステルダム・スマートシティ・プログラム(ASC)というもので、特に、生活、労働、運輸、公共という4つの分野に焦点を当てた取り組みを行っています。アムステルダム市民、企業、行政が一体となり、エネルギー消費量の削減に向け、2009年からいくつかのプロジェクトをスタートさせています。

私たちは、スマート・シティにより、2025年までに1990年比でCO2の排出量の40%を削減するという目標を掲げています。そのため、消費電力の見える化を推進し、日常生活において、どれくらいのエネルギーを消費しているのかを把握させることや、持続可能なエネルギーをどのように使えば効率的なのかを住民に意識させることに取り組んでいます。ASCは、市民、行政、産業すべてにおいて、エネルギーの消費や効率的な使い方について、その考え方を転換させるきっかけとなる発想を与え、時には相談相手にもなるプラットフォームであるといえます。


―どのようなプロジェクトがあるのですか?

一般家庭へのスマートメーターの設置を推進し、ITOタワーというオフィスビルディングでは、インテリジェント技術を駆使し、エネルギー消費の最小化等に取り組んでいます。また、ユニークな試みの1つに、アムステルダム市内の10の小学校が参加して行われる「スマート・スクール・プロジェクト」があります。これは2011年の春から始まるもので、オンライン・ポータルを使い、10週間の間にどの学校が一番エネルギーの節約ができるかを競い合う試みです。期間中、平均で最もエネルギーの節約に成功した学校には、1500ユーロの小切手が贈られます。


長い歴史の中で育まれてきた
オランダと日本の関係

―日本とはどのような協力関係があるのでしょう。
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オランダは国土の4分の1が海面より低いという地理的な条件により、昔からたびたび高潮や洪水に見舞われてきました。そのため、水管理技術が発達し、1870年代には、日本の明治政府が日本国内の河川管理・治水管理を向上させるために、オランダから土木技術等の専門家を日本に招くなど、人的・技術的な交流が長く行われてきました。
現在でも水分野における協力関係が続いています。たとえば、2010年にはオランダ政府の水政策担当者が来日し、オランダの水対策や制度改革について講演していますし、2011年にはデルタ・コミッションのコミッショナーが来日し、デルタプランや水の問題に関するオランダ政府の取り組み状況等について話をする予定です。

他の分野でも活発な交流があります。EUは、日・EU貿易投資促進キャンペーン「EU gateway Programme」を実施しています。その一環として、2011年2月1日~2日にかけ、環境・エネルギー関連技術の展示商談会が東京でありました。これはEU域内の企業の輸出促進を支援するプログラムで、日本企業と密接な関係を築くための貴重な機会を提供し、商談を成立につなげるための支援の一環です。対象となるのは主に中小企業で、オランダからも環境マネジメント分野の企業が参加しました。キャンペーンで対象となる産業分野は、他に医療ヘルスケア製品・技術や建築資材・建設技術、それに情報通信技術等の技術分野とデザイン関連分野があります。

また、最近では、大学との連携が盛んで、バイオテクノロジー、やナノテクノロジー等の分野で協力し、次世代のバイオ燃料や環境分野での情報交換や連携も活発化しています。これからも環境をはじめとし、さまざまな分野での連携が進むのではないでしょうか。


―本日はありがとうございました。

編集後記:


取材の後、「日本の車や家電等の省エネ製品は素晴らしいですが、オランダでは、人々は、製品そのものというよりもむしろ、製品を作るためにどれだけエネルギーを必要としたのかを考えています。たとえば、原材料の調達から製造、販売、廃棄に至るライフサイクル全体で捉えるという視点です。環境を考える時には、そうした視点も必要ではないでしょうか」と指摘されました。私もそのことについては全く同感です。「ライフサイクル」という一連の流れの中で、温室効果ガスの排出を見ると、私たちの消費行動も変わってくるかもしれません。


担当者様プロフィール
ピーター・テルプストラ氏:CO2の再利用やスマート・シティの実現化に取り組むオランダの環境政策

ピーター・テルプストラ氏

駐日オランダ王国大使館
経済部二等書記官

2005年オランダ外務省入省。同国ハーグにて政務官としてリスクマネジメント分野における政策立案等に従事。その後バングラデシュで、二等書記官として水管理に係わるインフラ開発プロジェクトに携わる。2010年、駐日大使館に着任、経済部二等書記官として、医療設備、運輸、環境分野において、日本市場を目指すオランダ企業の支援等に取り組む。

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