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在日カナダ大使館

 

エネルギー・資源部

次世代のエネルギー資源、「シェールガス」に世界が注目

カナダは世界的なエネルギー需要の高まりを受け、国内の豊富なエネルギー資源の利用価値をさらに向上させる必要があると考えている。もともと天然資源の豊富な同国は、近年、大量に埋蔵されていることが判明した新たなエネルギー資源、シェールガスの輸出を商機と捉え、アジア市場への展開を計画している。シェールガスの輸出に向けた展望や課題、政府の取組み等について、在日カナダ大館商務官、レスリー・ギル氏に話を伺った。

取材/松本美菜
写真/三宅聡子

カナダは天然資源の宝庫
アジア市場に熱い眼差し

―カナダはエネルギー資源の輸出に力を入れていますね。その輸出構成はどのようになっていますか?
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ご存知のように、カナダは天然ガス、原油、石炭、ウラニウム等の豊富なエネルギー資源の産出国です。カナダにおける石油と天然ガスの主な産地は、アルバータ、サスカチュワン、ブリティッシュ・コロンビアの3州です。 カナダのエネルギー資源(原油、石油製品、天然ガス)は、カナダの総輸出額の約22%(2009年)と、非常に大きな割合を占めています。その中で、石油(原油・オイルサンド油)の99%は米国に、残りの1%はアジア向けに輸出されています。また、天然ガスの60%は米国向けに輸出されており、これは量に換算すると、1日あたり、9Bcf(90億立方フィート)という計算になります。


―エネルギー資源の輸出の現状や戦略について、教えてください。

現在、天然ガスと石油は国内向けを除き、基本的に米国に輸出されています。米国はカナダと隣接していますから、どちらもパイプラインにより、輸送が容易にでき、地の利を活かした輸出に力を注いできたという経緯があります。 ところが、国内における天然ガスの枯渇が懸念され始めたことから、カナダはほんの4、5年前まで、輸入することを計画していました。しかしその後、天然ガスの一種であるシェールガスがカナダ・米国を含む北米地域に大量に埋蔵されていることが分かり、状況は一変しました。天然ガスを輸入する必要がなくなったことは言うまでもありませんが、それまでカナダから天然ガスを輸入していた米国にもシェールガスが埋蔵されているので、カナダの資源輸出先としての米国市場は、徐々に縮小してきたのです。そこで、カナダは、米国以外の市場に注目するようになりました。中でも近年、天然ガスの需要が高まっているアジア市場は、その輸出先として有望であると考えています。


存在感を増すシェールガス
安定供給には課題も

―シェールガスとは、どのようなものですか?

シェールガスはシェール層といわれる硬い岩盤の割れ目に閉じ込められており、その成分のほとんどはメタンで構成されています。従来のガス田よりもさらに深い地中に存在するため、非在来型天然ガスともいわれています。採掘方法が難しいという課題があり、開発はあまり進んでいませんでしたが、近年、採掘技術が向上したことにより、その生産に弾みがつきつつあります。

現在、シェールガスはケベック州でも見つかっていますが、カナダ国内で最も多く埋蔵されていると考えられているのはブリティッシュ・コロンビア州です。同州には主要なシェールガス貯蔵層が4カ所見つかっており、その合計埋蔵量は1,200Tcf(1,200兆立方フィート)といわれています。 カナダ全体のシェールガスの埋蔵量について、正確な数字を申し上げることは難しいですし、どれ位の期間安定的に供給できるかは、技術にもよりますから一概には言えませんが、北米地域全体では、一般的に100年~200年程度のシェールガスの供給が可能な量はあると見込まれています。


―シェールガスの輸出に向けた課題はどのようなものでしょうか。

豊富な埋蔵量のあるシェールガスは、低価格のエネルギー資源として、注目されるようになりました。同時に、石炭等と比較し、二酸化炭素の排出量が少ないとされ、低炭素社会の実現という観点からも、シェールガスは、従来の化石燃料の代替エネルギーとして有効であると考えられています。そのような理由により、天然ガスの需要が高まり、アジア市場への輸出の増加が期待されているのです。

現在、ブリティッシュ・コロンビア州は、アジア太平洋地域への天然ガス輸出の玄関口として、シェールガス開発に向け、さまざまな投資やインフラの整備が進んでいます。しかし、主要な課題が2つあります。1つは、世界における天然ガスの需要動向が未知数であるということです。現在、同州におけるシェールガスの主要な生産地域は、北部のHorn Riverで、78Tcf(78兆立方フィート)のシェールガスが市場向けに供給できるといわれています。何十年分もの量をカバーできる量ですが、そこで課題となるのが、市場の需要動向です。買い手がアジアなのか、あるいはそれが世界のどこであったとしても、それらの国々がカナダからどれだけ輸入するのか、現状ではそれが不明確なのです。

次にあげられるのがパイプラインの建設です。たとえば、もっと多くの天然ガスをアジア太平洋地域に輸出する場合には、カナダの西海岸にパイプラインを拡張する必要があります。現在、同州のKitimatまで延びる既存のパイプラインがありますが、将来、カナダの西海岸からシェールガスを輸出するにあたっては、Pacific Trails Pipeline(PTP)のような新しいパイプラインを拡張させる必要があるでしょう。


―先ほど、石炭と比較し、シェールガスのCO2の排出量は少ないとのお話がありました。けれども、一部の専門家からは、CO2の排出について、懸念する声が上がっています。

シェールガスは、抗井を介して流体を圧入し、ガスを取り出しますが、地中のガスを採り出す点においては、従来型の天然ガスとシェールガスは、大変状況が似ています。ですから、石炭よりは少なく、かつ、従来の天然ガスと比較しても、シェールガスはそれほど大量のCO2を排出するわけではないと聞いています。

カナダはまた、CCS(Carbon dioxide Capture & Storage)という技術の先端を行っています。これは、ガス層や油田等で発生する二酸化炭素を分離・回収し、地中に貯留する技術です。こうした技術を利用することで、CO2の排出をより低減化させた資源を生産することが可能です。


投資対象国としての
カナダの魅力

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―シェールスガスの供給国として、どうしてカナダが注目されるのでしょうか。

大きく3つの理由があると思います。1つは、資源調達先の多様化が進んできたことが挙げられるでしょう。世界の国々はオーストラリアやインドネシアなど、限られた国や地域からのみの輸入に依存することが難しくなってきたことも要因として挙げられると思います。実際、インドネシアは国内でエネルギー資源の需要が高まり、輸出できる量は減少しつつあります。ですから、需要の多い国は、多くの調達先を確保しておく必要があります。北米地域の天然ガスの価格はアジア地域の約3分の1と、低廉ですから、カナダは調達先として、他国との比較においても、非常に競争力があると考えられます。 2つ目は、供給国であるカナダは、国としても経済的にも安定しており、安全で、かつ、透明性のある、公正な規制により、シェールガスの生産についても、諸外国からの投資に適していると考えられます。

3つ目の要因は、カナダが地理的にアジアに近いという利点があることです。たとえカナダから日本まではオイルタンカーですと、11日、オーストラリアからは12日、クウェートからですと、20日もかかります。タンカーで運ぶには、日々膨大な輸送費がかかりますから、たとえ1日の違いでも大きなコスト削減につながります。

これらの要因に加え、カナダはアジア太平洋ゲートウェイ・輸送整備計画(注)などにより、アジアとの流通の迅速化を図っています。港湾や輸送ルート等を整備することで、効果的な物流システムを構築し、大量の貨物輸送への対応を加速させる狙いがあります。


―天然ガスの輸出における政府の役割を教えてください。

カナダは世界第3位の天然ガスの生産・輸出国で、国を挙げて開発と生産、それに輸出に取り組んでいます。しかし、こうしたエネルギープロジェクトを推進するにあたっては、開発、生産、資源の貯蔵設備や輸送、それに輸出に至るさまざまな法律や規制基づく手続きや監督などが必要です。

カナダはエネルギー政策において、州政府と連邦政府がそれぞれに異なる役割を担っています。天然資源は州政府により所有と管理がなされ、同政府が定めるさまざまな規制に従わなくてはなりません。一方、連邦政府は、国際間、あるいは州政府間のエネルギー取引等について、責務を果たしています。連邦政府は効率的、効果的な規制管理体制を持ち、民間企業がカナダにおいて、競争力のある魅力的な投資ができるよう、物理的な環境を整え、さらには、透明性のある規制プロセスを提供できるよう、さまざまな取組みを行っています。

たとえば、2011年6月に、カナダの天然資源省や州政府の担当者や企業関係者が来日し、液化天然ガスセミナーを開催しました。天然ガス開発の現状や環境と規制について、日本の市場関係者にさまざまな情報を提供する機会を設けたのも、国を挙げての支援の一環といえましょう。 私たちは規制緩和を進め、魅力的な投資環境を整え、市場主導型の政策を推進しています。天然資源について、どのような価格で売買がなされるかは、市場が決めますし、政府が特定の地域や国との貿易を強制しているわけではありません。ですから、連邦政府、州政府も含め、私たちの仕事は、環境評価や安全性にかかわる規制などのさまざまなプロセスにおいて、資源の輸出に向けたプロジェクトが円滑に進むように対応することです。開かれた貿易や投資が行われることが重要なのです。


―日本の企業とは、どのような協力ができますか?

カナダはいつでも投資に対して門戸を開いています。ですから、日本企業との連携や合弁事業を行うことや、シェールガス産業への投資等、特にLNG関連事業における協力関係を構築することについては、カナダとしても大いに歓迎しています。現に、ブリティッシュ・コロンビア州では、「Kitimat LNGプロジェクト」が進んでいます。すでに、カナダ国家エネルギー委員会(The National Energy Board=NEB)への輸出ライセンスの申請がなされ、最終的な認可を待っていますが、2014年か2015年頃にはアジア太平洋地域に向け、シェールガスから生成されるLNGの輸出が始まるのではないかと期待されています。 近年、中国をはじめ、アジア各国で天然資源の需要が高まりつつあります。とりわけ、日本は、天然ガスの需要が高く、加えて3月11日の東日本大震災による福島第一原発事故以降、代替エネルギーの議論が活発化しています。カナダは十分な量の資源を長期にわたり供給できますし、日本のエネルギー安全保障、安定供給の観点からも、日本にとって良好なパートナー関係を継続できるよう、あらゆる支援や日本への協力を惜しまない考えです。


―本日はありがとうございました。

(注)アジア太平洋ゲートウェイ・輸送整備計画(Asia-Pacific Gateway and Corridor Initiative=APGCI)は、カナダ政府が民間セクターとともに推進する輸送ルートの増設や物流拠点の拡充・統合等を目指すインフラ整備計画のこと。これらにより、アジア地域とカナダを結ぶ物流網の高度化・効率化が進むと期待されます。詳しくは、http://investincanada.gc.ca/jpn/advantage-canada/asia-pacific-gateway.aspxをご参照ください。



編集後記:


東日本大震災以降、日本でも代替エネルギーに関しての議論が活発に行われるようになってきました。多くの日本人は、石油のほぼ100%を輸入に依存しているということを知識としては持っていますが、今まであまりにもエネルギー資源ということに無頓着であったのではないでしょうか。日本と異なり、カナダは実に豊富な天然資源に恵まれていますが、それでも、エネルギーとして供給するために、実にさまざまな人手と技術、そして気の遠くなるような工程を経なければなりません。暮らしの中で、日々、私たちは無意識のうちにエネルギーを消費していますが、実はそれらは簡単に手に入るものではないのだということを改めて感じました。


担当者様プロフィール
レスリー・ギル氏:次世代のエネルギー資源、「シェールガス」に世界が注目

レスリー・ギル氏

在日カナダ大使館 エネルギー・資源部
商務官

カナダの石油資源・原子力にかかわる政策やビジネス情報等の提供を行う。CCSについても、関係者との緊密な連携により、技術情報の収集や情報交換に努める。エネルギー分野における産官学の連携や関係の維持・構築、さらに日加両国の橋渡しに尽力。関連分野についての各種セミナーやシンポジウムのコーディネートなども手掛ける。

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