世界の環境政策を取材  

ポシヴァ社(Posiva Oy)

 

「自国から核廃棄物を出さない、入れない」という決定に基づき世界に先駆けて始まった
最終核燃料保存施設オンカロのプロジェクト

北欧のフィンランドは現在5基目の原子炉が建設中であり、2010年にも新規原子炉2基建設を認可した世界初の国だ。更に使用済み核燃料最終保管施設の建設でも世界でもっとも進んでいる国でもある。 今回、使用済み核燃料保管施設を調査・建設するポシヴァ(Posiva)社の広報部長ティモ・セッパラ氏に話を伺った。

取材/セルボ貴子

―ポシヴァが設立された背景を教えてください。

e_posiva12_0319_005_s.jpgフィンランドの南部ロヴィーサに最初の原子力発電所ができたのが1977年、それから1996年までは使用済み核燃料はソ連、ソ連崩壊後はロシアに移送されていました。しかし1994年原子力エネルギー法が変更になり外国から使用済み燃料を国内に持ち込まない事、そして国外に自国で使用済み燃料を持ち出さない事、と決められました。同時に電力事業者に対して国内で発生する高レベル放射性廃棄物(燃料)を安全に保管するという義務が発生しました。1995年に原子力発電事業者であるTVO(Teollisuuden Voima)社とフォルトゥム(Fortum Power and Heat)社が設立したのがポシヴァ(Posiva)社です。2社はそれぞれフィンランド南西部のオルキルオトとの南部のロヴィーサに原子力発電所を持っており、自社の発電所から発生する放射性廃棄物を"安全に"処理・保管する義務が発生します。

そこでまずTVOが独自にオルキルオト発電所の廃棄物のために地質調査から始めました。使用済み核燃料最終処分場に適した場所を選定しはじめ、実に17年かけてフィンランド南西部のオルキルオト原発エリアが選ばれました。輸送のリスク、コストを減らす意味でもこれは適しているでしょう。保管の方法として地震が少なく強固な岩盤がある国土の性質を活かして地下にトンネルとシャフトを掘っています。実際の建設認可は今年申請される予定です。ただ、調査研究の許可が出た時点で後ほど調査の為の掘削を建設に有効利用できるよう計画・設計されているので新たなトンネルを掘ったりする必要はありません。


―実際にポシヴァ社はこれまで何をしてきたのですか。

これまで国内外の専門家、高等教育機関と協力し地質、環境、地球化学など数多くの分野で調査を進めてきました。例えば岩盤、保管方法、リスクなどを徹底的に調査してきたのですが、この場所が最終保管場所に適しているという認識はますます強まっています。私達は、1999年に原則許可申請を政府に提出し、翌年政府は原則決定を出し、2001年国会でこれが承認されました。2001年に国会から原子力法に基づく原則決定の承認を受けて調査を進めてきました。そして今年国会に建設許可申請をする為のデータを地質学、水質学などの観点から収集していまポシヴァの株主は電力企業二社ですので、これらの既存の原子炉4基分の使用済み核燃料及び、現在建設中のオルキルオト3号基と、そして2010年国会で新規に原則決定が出たオルキルオト4号基の将来の使用済み燃料そしてロヴィーサに3基目の原子炉の許可が出た場合の事を想定し、全部で7基分の原子炉の耐用年数内の使用済み燃料が収まるだけのエリアを将来確保する事を想定し、岩盤の適正のみならず、その燃料の保管方法、保管する為のキャニスターや緩衝材の適正、年月を経る段階での環境への影響、などを多角的に調べています。

ちなみに、よく質問されますが、フィンランドでは使用済み核燃料の再処理は行いません。これは国内に再処理施設が無いため、国外に使用済み燃料を出すことになり原子力エネルギー法に反するからです。また使用済み燃料は再処理をしたとしても高い放射線を出すので結局それらを最終処分場に保管しなければなりません。したがって現時点では、わが国ではそのまま使用済み燃料棒の束を鋳鉄の容器に入れ、銅製カプセルに更に納めて蓋をするという二重カプセル方法が考えられています。これはスウェーデンのSvensk Karnbranslehantering社が開発したKBS-3方式と呼ばれるものです。


―現在のポシヴァ社の状況はどうなのでしょうか。
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これまで計画通りに進んでいるといえます。 2012年3月2日現在、トンネルの長さは4987m、地下454mの所まで掘り進んでいます。そして2月始めにトンネル最深部では、設計に基づいて試験的な最初の処分孔(カプセルを挿入する為の)が掘られた所で、更なる試験的な穴を掘っていきます。シャフトは3本あり、1本が空気の取入れ口、1本が排気口、最後が人間、車両が昇降するエレベータ用です。使用済み燃料の搬送は有人、無人の車両でエレベータを用いて行われる事になります。

当社の今年最大の目標は無事にフィンランド政府に対して年末までに建設許可申請をする事に尽きます。我々は社員約60名の小さい企業ですので社全体がそれに向かって集中して仕事をしています。

計画では、来年建設許可がおりてから2018年までに施設建設を完成させ、その次に運用許可申請を政府に出し、2020年から運用開始を始められるように進めていくことになっています。その後約100年間最終処分場には原子炉から出してプールで中間保管され温度が安定した使用済み燃料がカプセルに保管され順次運び込まれ、坑道が埋められたカプセルで一杯になると施設そのものを封鎖する、という流れです。


―福島の原発事故以降、原子力発電に関しては批判が高まっていましたが、POSIVA周辺ではどうですか?

意識調査の結果などを見ると、フィンランドで原子力発電に関する支持率は多少下がっているようです。ただしポシヴァの仕事は核廃棄物をできるかぎり安全に保管・管理する事ですので、実質的な意識の変化や影響は殆どありません。実際に原子力発電所は世界各地で稼動し続けており、その廃棄物はいつか何らかの方法で最終保管しなくてはならないのですから。この問題はどの国の国民もいずれ真剣に向き合わなくてはならないものでしょう。最終処分場自体が建設段階であるため、EUが原子力発電をしている国に要求したストレス・テストなども、実際に最終処分自体がまだ行われておらず、ポシヴァのオーナー企業である二社には関連しますが、私達には要求やテストなどはまったくありませんでした。


―安全性についてはどうですか?火災などが考えられるかと思いますが。

はい、最終処分場に関しては、火災はもっともリスクが高い事故の一つですので設計段階でその事に注意が払われています。トンネルで作業中に火災が発生した場合を考慮して、防火壁で守られ食糧や水が保管されているた避難場所やコンテナが地下100mごとに設けられており、職員はそこに逃げ込む事が出来るようになっています。


―現在の技術では無理でも、将来放射性廃棄物を無害にする事が可能になった場合、埋め立てたカプセルを地上に取り出すことは考えていますか。
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その可能性はあります。カプセルを地上に戻す事はいつでも可能です。実際一番簡単なのはキャニスターが地下に運ばれ、掘られた穴に入れられたままの状態のときでしょう。それならばすぐに車両がキャニスターを取り出し、また地上に運び出し、燃料をカプセル梱包する施設に戻すだけです。しかし、使用済み燃料のカプセルがすべて運び込まれ地下の穴がベントナイトで埋められ水分を吸ってベントナイトが膨張した後に、どうしても取り出したいとなれば、また通路から用意しなければなりません。簡単にドアを開けて取り出すという事は不可能です。つまりまた穴を掘り、地下まで到達し、車両などで運び出す手段を整えなくてはならず、高い技術と、技術と、十分な労働力が必要になります。 ただ現在の計画の出発点はその必要がないように、という考え方で埋め立てたらそのまま監視の必要なく放置する、ということですが。


―現在世界10カ国で進んでいる最終処分場のプロジェクトとしては最も進んでいるという事で各国から視察や問い合わせも多いと思います。ビジネスにしようとは思われませんか?

確かに問い合わせ、視察希望は多く有りますが、前述のように私達はオーナー企業の放射性廃棄物を安全に最終処分場へ保管するというプロジェクトが大義名分です。利益を出してはいけないということではありませんが、少人数の企業でもありそうした余裕は正直ありません。


―日本は地震を始めとする自然災害の多さから地質学者の間でも最終処分場を建設するのに適さない国だといわれています。日本で同じような施設は建設できないでしょうか?

私自身は地質学者でないので専門的なことはお答えできません。 確かに北欧の古い地層に比べ、まだ地盤自体が新しく不安定な為、最終処分場の候補地選定を含めて難しい場所ではあるでしょうが、まったく不可能とも言い切れないのではと思います。


―デンマーク出身のマイケル・マドセン監督が撮影した「10万年後の安全」をご覧になりましたか?この作品に関するご感想は?

はい、個人的にも5回は観たと思います。私自身もインタヴューされ、出演していますので。この映画はとても印象深い映像だと思います。 しかし中身は全体を通して非常に悲観的だと感じます。実際彼らはフィンランドが最も暗く寂しい景色に見える晩秋に撮影にやってきたんですよ。 私達の目的は放射能の影響が無害になるであろう10万年後まで使用済み核燃料を安全に保管する事であり、マドセン監督が描きたかったのは一貫して10万年後、誰かがオンカロを開けたらどうなるのか?何が起こるのか?という事のようでした。10万年後に誰かがあけても、放射能はもう出ていないでしょうからもう危険はなく大惨事もひき起こったりしません。またトンネルは、ベントナイトなどでふさいでしまいそこをまた掘り進めるのは簡単では有りません。新たなトンネルを掘るのと同じ労力がかかるでしょう。そのポイントを作品内で伝えてもらえなかったのは残念です。


―マドセン監督の日本でのメディアインタビューでは、ポシヴァ側が映画公開を一定期間でしてはならないと言われたとコメントしていましたが、本当ですか?

そのような事はありません。契約書の有効期間までに撮影を終えることを条件としていました。(期間が過ぎると再度契約する必要性が生じる)その契約では、映画公開前にポシヴァ社側もその作品を鑑賞し、内容について議論することができるよう盛り込まれていましたが、それも実現しませんでした。これに関してあえて文句は言っていませんが(笑)



編集後記:


なぜフィンランドが原子力発電を推進するのかと疑問に思う人は多いようです。これには、隣国が歴史的にも関係の根深いロシアである事が大きく関係しており、国策として可能な限りエネルギー依存度を減らし万一の際に送電カットなどで打撃を受けるリスクを避けるという考えがまず第一にあります。また、京都議定書、そしてEU加盟国として温室効果ガスの2020年までの一定量削減目標もあります。ただフィンランドは林業、製紙業、金属加工業などが盛んな工業国でもあるため、産業界は環境面での政策に増して電力の安定供給に関してとても強い関心を持っています。更に雇用確保(工場の国外流出防止)の為にも電力は必要と言う認識があり、古い強固な岩盤を持つ国である安心感、地震が非常に少ない事、電力企業の地域住民への徹底した情報公開も原子力発電は必要という考えを支持する基盤と成っているようです。

使用済み核燃料は日本でも各地で中間保存されている状態です。原子炉から取り出した使用済み燃料はまだ高熱を発しており、最終処分(この場合処分=保管ですが)できる温度に下がるまで数十年を要します。日本では再処理をする施設が青森にあり、最終処分に関する研究所も北海道にありますが、日本のような地震国で最終処分場候補地を募っている現在でも手を挙げる自治体はありません。原子力発電所の仕組みをはじめとして、こうした状況についてご存じない方が殆どなのではないでしょうか。 こちらの電力会社のウェブサイトでは原子炉の出力、メーカー名、事故の場合にはその情報など知りたい事がすぐ調べられます。日本の電力会社のサイトでは企業によって情報量に差があり、例えば原子炉のメーカー名すら記載されていない場合が多いようです。 失われた信頼を回復するために、まずは日本の電力会社にもっと徹底した情報公開を希望します。


担当者様プロフィール
ティモ・セッパラ(Timo Seppälä):「自国から核廃棄物を出さない、入れない」という決定に基づき世界に先駆けて始まった<br>最終核燃料保存施設オンカロのプロジェクト

ティモ・セッパラ(Timo Seppälä)

ポシヴァ社(Posiva Oy)
広報部 部長

大学で農業・森林学修士号取得後、フィンランド漁業中央組合事業部長を10年余り勤める。ポシヴァ社には1998年転職、以来社内外の広報を担当。

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